コロナ禍だからこそ大幅引き上げが必要
神奈川県の最低賃金審議会は8月5日に、神奈川県最低賃金の改正について「1円」引き上げて「時間額1012円」とする答申を出しました。神奈川労連は大幅引き上げを求めて異議申し出を行いましたが認められず、10月1日から発効することになります。
今年は、中央最賃審議会が極めて不当な、「現状維持」の「目安」を出したもとで、神奈川地方最賃審議会で議論がされました。神奈川労連は、地賃審議会が「目安」に拘泥されず、引き上げを決定したことは評価します。
同時に、憲法が保障する「健康で文化的な生活」を実現するには、「時間額1500円以上」が必要であり、引き上げ額は不十分です。
生計費に満たず低すぎる
答申の「時間額1012円」は極めて低い水準です。年間に1800時間働いたとしても182万円強にしかなりません。この収入では、単身労働者でも食うや食わずやの生活になります。
最低賃金額は生計費を満たす必要があります。「フルタイムで働いているのに、まともに食えない・生活できない」賃金水準は、許されません。
経済再建のためにも
審議会で使用者側は中小企業の経営の苦しさを理由として「凍結」を求めたようですが、この主張は誤り・矛盾があります。
中小企業の経営困難の根源は最低賃金にあるのではなく、大企業による単価切り下げや消費税増税、需要の不足にあります。いずれも国や行政の施策によって改善・解決がはかられる問題であり、最低賃金抑制の理由になりません。
また、コロナ禍によって経済が大きなダメージを受け、再建が課題になりますが、当面インバウンドや海外需要が大きく期待できないなか、内需拡大がカギとなります。内需拡大には、個人消費を増やすこと、賃金を引き上げることが必要です。コロナ禍から経済を再建するために、今こそ最低賃金の大幅引き上げによる内需の拡大こそが求められます。
内部留保の活用で
さらに言えば、溜まるばかりで還流せず経済停滞の原因となっている大企業の内部留保を活用して、下請け単価を適正水準に引き上げれば、中小企業においても最賃引き上げに十分対応できます。
また、諸外国のように政府が中小企業予算を確保し、直接的な経営支援を本格的にとりくむことが必要であり、労働組合も要求しています。
本質的な議論が必要
最賃審議会には、「あるべき最低賃金水準」の議論が期待されます。真摯な議論の状況を広く公開することが、最賃について社会的合意形成をはかっていくうえで有効です。
また、全国2番目に高い最賃額の審議会として、全国一律にむけ全国をリードする議論が求められます。