2020年度版 国民春闘・神奈川版資料(ビクトリーマップ)
2020年は神奈川労連結成30年の年です。この間、全労連、神奈川労連等の奮闘にもかかわらず、日本は経済(GDP)成長が止まり、賃金が上がらない国になってしまいました。
OECDの調査では、時間当たりの賃金が過去21年間(1997年~2018年)で、主要国の中で日本は唯一マイナス(-8%)で、ドイツ59%、フランス69%、アメリカ82%、イギリス93%、韓国167%増です。
国民1人当たりのGDPは2000年には日本は世界で2番38,536US$でしたが、2018年には39,306 US$で世界26位に下がってしまいました。この間アメリカは36,318⇒62,606 US$、イギリス28,044⇒42,588 US$、ドイツ24,004⇒48,264 US$、韓国11,948⇒31,364 US$になっています。
これらの実態を広く労働者・国民に知らせ、労働者の賃金を大幅に引き上げることが、国や自治体の税収を上げ、経済的理由で結婚しない若者や、希望するだけ子供を作らない夫婦を減らし、少子化に歯止めをかけることにつながります。
世界的にも格差と貧困の広がりが大きな問題となり、最低賃金の大幅引き上げ、時給15DOLLAR(ドル)の運動も広がっています。日本でも全労連・各地方労連の生計費調査の取組や神奈川労連が行った、現行最賃水準は最賃法と憲法25条違反と訴えた最賃裁判等により、全国一律最低賃金法制定と時給1500円の世論と運動も広がり始めています。
役員報酬や株主配当、そして内部留保のため込みを年々増やしている大企業への批判も強まっています。研究者たちからも内部留保に課税すべきなどの声も広がっています。
日本でも中小企業者と連携を強めながら、国や自治体に中小企業支援を抜本的に強めさせ、賃金底上げを目指して、目に見える、メリハリのある春闘が求められています。
働き方改革や入管法の改悪による低賃金で無権利な外国人労働者の活用など許さず、外国人労働者も含めて、SDGSでも定められているすべての労働者にディーセントワーク(働きがいのある人間らしい労働)を保障させ、8時間働けばまともに暮らせる賃金を受け取れる社会、過労死・過労自死、パワハラ・セクハラのない職場・社会目指して2020春闘大いにたたかおうではありませんか。
また2020春闘は憲法改悪ストップ、安倍政権打倒の春闘、市民と野党の共闘を強める春闘でもあります。
神奈川労連・春闘共闘がすすめている要求アンケートにも積極的に取り組み、多くの未組織労働者とも連携を強め全労働者の賃金闘争・春闘を再構築していくために、奮闘しましょう。
そのためには以前から神奈川労連が掲げている年齢ポイントごとの生計費を基準とした最低賃金(18歳20万円、30歳30万円、35歳35万円など)にも本格的に取り組んでいくことが重要です。
個別企業での賃上げ春闘と全労働者の社会的賃上目指した国民春闘の前進のために、このビクトリィーマップが役立つことを期待しています。
今年の特徴
1. 今年の神奈川のビクトリーマップで対象としたのは、県内に500名以上の労働者のいる企業で、財務諸表の入手可能な100社で昨年に比べ5社減っています。
今回は県内従業員数が500人以下になったため以下の9社が外れました。
サカタのタネ、三菱化工機、京セラ、富士電機、IHI、キーパー、キタムラ、三城、野村総研
その代わりに以下の飲食のチェーンストア4社を加えて100社としました。
日本マクドナルドH、ゼンショーH、ロイヤルH、すかいらーくH
この4社を含め、商業分野で県内従業員数がわからない企業については、連結従業員数+平均臨時雇用者数の10%を県内従業者数としました(***をつけたところ)。
*を付けた企業では県内従業員数は連結従業員数の10%、**は同じく20%としました。
運輸・倉庫業種では県内従業員数について、相鉄Hは連結従業員数のほぼ100%、京浜急行電鉄は3分の1、東京急行電鉄は5分の1、小田急電鉄は2分の1としました。
今年から平均臨時雇用者数も掲載するようにしました。
外資系の日本IBMなどは、財務諸表が非公開のため載せていません。
2. 2019年3月決算等では、従業員数は全体では73,866人(1.61%)増の4,663,343人でした。県内では13,315人増の364,528人でしたが、事業所ごとの従業員数を記してない企業が増えており、推定値を用いていますので正確ではありません。
業種別では、12業種が増やしています。5,000人以上増やしているのが、化学・医薬品(9社)23,535人、情報通信(5社)22,170人、鉄鋼・非鉄・金属(7社)20,452人、商業(11社)14,756人、運輸・倉庫(8社)13,801人、輸送機(10社)6,709人の6業種です。
減らしているのが、電機(18社)31,464人、精密・諸工業(3社)8,047人、電力・ガス(2社)869人の3業種です。
個別企業として5,000人以上削減しているのは東芝12,561人、日立製作所11,334、富士通8,227人、富士フィルム5,407人、リコー5,215人の5社。他にソニー2,900人、キヤノン2,720人、パナソニック2,274人の3社が1,000人以上減らしています。
5,000人以上増やしているのは武田薬品工業22,384人、日本電信電話20,818人、住友電気工業17,663人、ヤマトH12,029人、イオン8,593人の6社が増やし、他に17社が1,000人以上増やしています(企業買収なども含む)。
3. 内部留保は98兆3298億円で、1年間に3兆2205億円(3.39%)増やしています。従業員1人当たりでは63万円増やし、2,107万円になっています。
業種別では減らしたのは、情報通信(5社)6,771億円(6.9%)、輸送機(10社)2,719億円(2.8%)、建設(5社)2,109億円(1.5%)、金融(4社)1,856億円(7.7%)、サービス娯楽等(2社)1,747億円(1.7%)の5業種、他の10業種は増やしています。特に電機(18社)18,067億円11.1%、化学・医薬品(9社)9,868億円12.2%、電力・ガス (2社)6351億円19.1%、機械(7社)1,825億円11.1%と10%以上も増やしています。
個別企業では1年間に1,000億円以上増やしたところは、東芝8,839億円、ソニー7,969億円、武田薬品工業6,290億円、東京電力5,984億円、富士通3,732億円、JX・H2,420億円、東日本旅客鉄道1,923億円、セブン&アイ1,628億円、JFE・H1,038億円、キヤノン1,000億円の10社です。
逆に1,000億円以上減らしたのは日本電信電話7,179億円、日立製作所2,476億円、関電工2,302億円、三菱重工業2,177億円、日産自動車1,971億円、日本郵政1,751億円、千代田化工1,509億円、SOMPO・H1,486億円、イオン1,425億円、日本電気1,311億円の10社です。
全体で71社が内部留保を増やし、29社が減らしています。
1人あたりの内部留保額は、業種別では福島原発事故の影響にもかかわらず、電力・ガス(2社)が6,862万円、次いでサービス娯楽等(2社)4,270万円、化学・医薬品(9社)3,692億円、情報通信(5社)3,241円、輸送車(10社)2,955億円、となっています。企業別は番付参照。
4. 経常利益は今年度は7業種で増、8業種で減、全体では前年比2,536億円減となっています。
業種別では精密・諸工業(3社)2,189億円増など。減らしたのは、建設(5社)2,721億円、輸送業(10社)1,652億円などです。
個別企業2社で赤字、98社は黒字でした。日本電信電話とソニーは1兆円以上の利益を上げています。
5. 株主配当は、ここでは親会社単体のみを掲載しました。日本電信電話3,511億円、武田薬品工業2,817億円、日産自動車2,406億円、日本郵政2,250億円、キヤノン2,134億円、ブリヂストン1,218億円の6社が千億円以上配当し、無配が3社。2生命保険会社を除き、98社合計で2兆8,758億円(前年比3,657億円14.6%増)の株主配当を行っています。親会社分だけでも株主配当を全連結従業員に回せば、98社の従業員1人当たり62.8万円支給が可能です。「平均臨時雇用者」を加えても50.3万円支給できます。役員報酬も日産のカルロス・ゴーンなど莫大な額が支払われています。
6. この100社の労働者すべてに1万円賃上げ(ボーナスは夏冬で5ヶ月とする)するためには、たった0.8%の内部留保を取り崩すだけで可能です。3万円でも2.5%にすぎません。「平均臨時雇用者」を加えても1万円なら1.0%、3万円なら3.1%です。
7. 仮に100社の県内労働者36万5千人に1万円賃上げ(ボーナスは夏冬で5ヶ月とする)したとすると県内経済への波及効果・生産誘発額は総額572億円となります。県内全労働者496万人に1万円賃上げしたとすると、生産誘発額は総額7,790億円となります。3万円ならばそれぞれ3倍の額になります。
活用資料と内容説明など
1. 活用した資料はインターネットのEDINETのホームページで検索した有価証券報告書です。事業所ごとの従業員数が財務諸表に書かれていないケースが多いため、最初に述べたような推定をしています。最近ではEDINETでなくても有価証券報告書****(企業名)で検索すればほぼ見れるようになっています。正確な名前でなくても、例えば日産(自動車なし)でも見れます。
2. 各企業の決算期は18年9月期から19年6月期までです。
3. 内部留保とは企業が上げた利益のうちから、株主配当、役員賞与、税金などを支払った分をのぞき、様々な名目で企業内に蓄積しているものです。
① 退職給与引当金:将来の退職金支払いに備えるために、全従業員の退職金総額の40%まで認められています。
② 各種負債性引当金:「海外投資損失引当金」、「特別修繕引当金」などのかたちで損金計上を認められているものです。
③ 資本準備金:新規に株式を発行する場合、額面ではなく時価で取引されるが、ここから得られる差益のこと。これは「資本」であるとして課税対象から外されています。
④ 連結剰余金:単体決算における「利益準備金」と「その他の剰余金」を合計したものです。
⑤ 東京電力は原子力損害賠償支援機構等から資金投入され、原子力損害賠償引当金として5,490億円計上されていますが、これも内部留保とみなされます。
⑥ 平成22年度4月以降、将来資産の除去にかかる費用を資産除去債務として計上することが出来るように法改正され、これも含めています。
⑦ 産業連関表:投資や消費にお金が使われた場合、どんな業種にどれくらいの生産(需要)や雇用を引き起こし、地域経済へ波及効果がでるか試算する表。100社の県内従業員全員に1万円の賃上げを行った場合と、県内すべての労働者に1万円の賃上げを行った場合の計算をしています。2万円の賃上げの場合はそれぞれが2倍になります。(1)先ず賃上げによってどのくらい収入が増えるか計算。(2)収入が増えることによって消費がいくら増えるか、現在の収入と消費支出の比率から計算。(3)それだけの消費支出があればどれだけの生産誘発・地域経済への波及があるか産業連関表を使って計算します。