長い間、横浜市立高校で社会科の授業を担当し働く権利を教えてきました。想像してはいましたが、学校の授業のレベルでは太刀打ちできません。この半年の間、いろいろな相談を受けましたが、痛感したことのいくつかを報告します。
11月に介護グループホーム「ウイズネット」に働く65歳と70歳の二人の女性から相談を受け、会社側と交渉の上、現在、65歳の女性について労働審判で争っています。争点は入居者に対する言葉遣いなどを理由とした「退職強要」と、制裁としてのシフト外し(仕事を全く入れない」)が認められるのかの2点です。
就業規則の「7日を限度に出勤停止」の制裁規定さえ無視するやり方です。労働契約書には,勤務時間は「シフトによる」とだけあります。こんな一方的な契約がそもそもあっていいのか、疑問です。
この案件に限らず、労働相談のなかで共通して感ずるのは採用時に労働契約を交わしていないということです。日本の就職は、実態は「就社」だと言われるように、長期雇用(終身雇用)慣行と引き換えに、労働の中身は雇用側が強い指揮権を握ってきました。この日本型雇用は企業別組合と相まって働きすぎや「ブラック企業」を生む土壌になってきたと思います。いまや長期雇用は保障されないのに意識のなかに労働条件の「白紙委任契約」が存続し労働者自らを苦しめているように思えます。
高校の就職指導でも、教師は「面接で労働条件について質問してはいけません。」と言います。日本労働弁護団が昨年秋に「ワークルール教育推進法の制定を求める意見書」を発表しました。学校でも労働権は教えていますが、日本型雇用慣行や企業別労働組合の持つ閉鎖的体質を打破する運動や制度の改革なしに若者の意識改革だけを求めても限界があるように思います。
学校教育、とりわけ喧伝されるキャリア教育の重要な宿題だと受け止めてほしいと思います。