神奈川では、所得面での最低限保障(ナショナルミニマム)の確立をめざして、神奈川労連、年金者組合、生活と健康を守る会、社保協などが中心となって「25条共闘」というとりくみを進めています。
この間、それぞれが闘っている最賃裁判、年金引き下げ違憲訴訟、生存権裁判を相互支援することを中心にとりくんできました。最賃裁判が終結するなかで、あらためて共闘を発展させることを目的に、8月27日に集会を開催し38人が参加しました。
闘いの歴史によって
講演として、全労連の布施・国際局長から、日本の生活保護、年金、最低賃金が国際基準と比較してどうなっているか、世界の社会保障の動きとあわせて、わかりやすい話しがありました。
各国の社会保障制度は「法律や協約、労働組合の規制力、闘いの歴史によって大きく違い、単純に比較することは難しい」と説明。例として、アメリカでは公的医療保険がなく、企業ごとに医療保険の内容が違うため、労働組合の団体交渉で最重要の課題になること、また、フランスの最低賃金は物価などの変動によってかなり自動的に引き上がっていくシステムとなっており、最賃にあわせて年金や生活扶助も引き上がることなどを紹介しました。
そのうえで、国際機関が比較などに用いる社会保障の考え方は、日本よりも幅広く、若年労働者の雇用確保施策(職業訓練や再雇用補助金)費用や、住宅確保のための補助金なども含まれていると説明し、国際基準にあわせて日本の制度水準がどうなっているか考えることが必要と指摘しました。
認識が変わってきた
世界的には、世界人口の半数を超える約40億人が何らの社会保護も受けていない現状、とりわけアジア・アフリカ・アラブ地域が遅れていることを紹介。同時に、「進んでいると考えられてきたヨーロッパにおいても、財政難や通貨危機によって全体的に給付や内容がかなり崩されている。顕著なのが年金で、支給開始年齢が引き上がられ、日本より悪くなっている国もある」と述べました。
一方で、新自由主義による社会保障や公的サービスの切り捨てに対し、認識が変わってきていると指摘。「実際、ポルトガルでは政権交代によって緊縮政策をやめ、切り下げていた年金額や最賃額を元に戻したところ、経済が回復していることが統計からも明らかになっている」、「カナダの1つの州では最低賃金を大幅に引き上げることに対し、経営者団体などが雇用が減ると言っていたが、逆に雇用が大きく増えている」という実例を述べ、「社会保護の欠如は人々の人生を通じて、貧困・不平等・社会排除の状態にし、経済・社会開発の障害になるという認識が広がっている」と強調しました。
国際機関と一致している
そして、「国際機関が提唱していることと、私たちが主張していることは一致している。国際労働基準も活用しながら、労働者と国民が主人公の社会をつくりましょう」と呼びかけました。
生保・年金・最賃についての各組織からの報告では、「生死に関わる問題として生活保護の夏季加算を求めている」(生健会)、「平均月5万4千円の基礎年金だけで生活している高齢者は740万人いる」(年金者組合)、「最賃は10年間で時間額220円引き上げてきた。当事者の声を集めるとりくみを強めていく」(ユーコープ労組)などが話され、いずれも25条共闘をさらに強めていくことの必要性が強調されました。
参加者からは、生活保護を利用している当事者からの実態報告や、最賃ギリギリで働く労働者の訴えがあり、また、「もっともっと連携したとりくみをしていくべき」との意見も出されました。