神奈川労連は毎年、全自治体にアンケートと要請項目を送付し、回答に基づき要請懇談を実施しています。今年度の特徴について紹介します。
職員の確保が困難
公務の職場でも労働力不足になっていることが明らかになりました。特に、町村などでは「応募そのものが少ない」、「内定しても辞退がある」など、確保したい人員に満たず、非正規職員で補っている自治体もあります。なかでも土木など技術職の確保の厳しさがいくつもの自治体から語られました。
あわせて、正規職員の長時間労働が課題になっています。職種や時期によって1か月に60時間、あるいは80、100時間を超える残業が起きています。労働時間管理にも課題があります。タイムカードなど客観的な方法で管理する自治体もありますが、「自己申告」という当局が管理に責任を負わない方法をとっている自治体も少なくなく、改善をさせていくことが必要です。
最賃以下で働く公務員
各自治体の高卒初任給とその時間単価は表にあります。時間単価が最低賃金を下回る自治体があり、大きな問題です。後で詳述する「2015時間問題」が要因の一つですが、今年度の最賃の改定により実質的に最賃を下回る公務労働者が発生します。「公務員は最低賃金の適用除外」との弁明がありますが、そもそも公務員賃金は最賃を上回ることが想定されているために「適用除外」なのであって、下回って良いはずがありません。
根本には国家公務員の賃金水準に問題があり(国家公務員でも最賃を下回る賃金水準が存在)、公務労働者全体の賃金を抜本的に改善させることが求められています。
改善した「2015時間問題」
1時間あたりの賃金単価は、年間の賃金総額を年間の実際の所定内労働時間で割って算出します。これと違ったやり方は労働基準法違反にあたります。ところが、県内の10以上の自治体が分母となる労働時間を、実際の労働時間(1900時間弱)ではなく国基準である2015時間として賃金単価を計算し、それに基づき残業代などの計算がされていました。分母の時間が大きくなれば単価は低くなり、残業代も本来払われるべき額から少なくなります。
昨年からこの問題を取りあげたところ、今年度の要請では「見直します」などと7自治体が回答し、2015時間を使う自治体が半減するという重要な成果となりました。残った自治体でも、見直しを「検討する」という自治体もあり、県内全自治体から労基法違反のやり方を一掃する可能性をつくりだしました。
会計年度任用職員
自治体で働く非正規職員の賃金・労働条件では、「10月から1000円に引き上げる」など前向きな回答もありましたが、財政難を理由に最賃に貼りつく自治体も少なくありません。
今年度の要請で大きな焦点になったのが、2020年4月から始まる「会計年度任用職員」という新たな制度です。これまで任用の根拠があいまいなまま増大していた、自治体の非正規労働者について制度を統一するものです。
「正職員の代替にさせないこと」、「雇止めが発生しないようにすること」を要請するとともに、新制度を機に賃金・労働条件の改善を抜本的に改善するよう強く求めました。「現在の非正規職員はすべて移行させる方向」、「期末手当や退職金など労働条件改善を考えている」などの回答が多くの自治体から出されました。
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公契約の「適正化」を
自治体が発注する工事や業務委託で働く労働者の賃金確保など「適正化」を求めました。特に、公共工事は予定価格の積算に用いる人件費部分の労務単価が40%以上も上昇しているのに、現場の建設労働者の賃金は変わらないか微増にとどまっています。「税金を使って発注価格も上がっているのに、現場労働者の賃金を上げ建設技能者の減少に歯止めをかけるという、政策目的が果たされていないことは問題だ」と追及。
「民間の労働契約に介入できない」など発注者責任を果たそうとしない回答もありましたが、「少なくとも調査すべき」との訴えに、「チラシを配布した」、「担当課から口頭で説明している」など何らかの努力をしている自治体が増えています。公契約条例のある厚木市では、「現場に職員が行って労働者からの聞き取りをしている」と先進的なとりくみが報告されました。
労働者の賃金を上げるために、公契約条例が必要であることがますます明らかになっています。
担当者から感謝の言葉
国は安価な労働力の確保策として、シルバー人材の活用を進めています。「生きがい事業」の目的を超え、明らかに労働力として活用しているところや、「労働者でない」ことから最低賃金以下の報酬で働かせているなど、問題が散見されており、本来の目的から外れるような活用の拡大をさせないとりくみを強めることが求められます。
各自治体からのアンケート・要請項目への回答結果は、すべての自治体に送付しており、「この資料は本当に参考になります」と感謝されることもあります。すべて自治体が労働者の賃金・処遇を改善し、労働者施策を充実させるために来年以降もとりくみを継続することにしています。