最低賃金1000円以上を求める『最賃裁判』の上告審において、10月18日、最高裁第三小法廷から、上告棄却・上告申立不受理の判決文が通知されました。
判決文は定型の三行半のもので、極めて不当不誠実なものです。低賃金で苦しむ多数の労働者が、憲法と最低賃金法に違反している最低賃金について、裁判所に訴えることを認めないという司法の責任放棄を確定するものです。
リアルな実態を告発
この間の審理において、勇気を持って立ちあがった多くの原告が陳述・証言をしました。
最低賃金ぎりぎりで働き生きることにより命や健康が破壊される深刻さ、自立も結婚もできない、将来の希望ももてない、友人との付き合いや趣味など社会的文化的な生活ができない、リアルな実態を赤裸々に語り続け、その根本原因である国による最低賃金の憲法違反の異常な低額放置を断罪する歴史的判決を強く求めてきました。
しかし、第一審の横浜地裁判決、第二審の東京高裁判決は、いずれも最低賃金の改正決定について処分性が認められないとして、訴えを却下し、最低賃金の水準が生活保護の水準を下回る逆転現象が解消されているか否か、ひいては生存権や勤労権の侵害が生じているか否かについて判断することを回避しました。今回の最高裁判決はこれを追認するものです。
闘いとった成果
裁判においては不当な結果となりましたが、闘って勝ち得た成果は大きなものがあります。
最大の成果は、実際に低賃金で働く仲間が声をあげ、あまりに低い最低賃金の不当性を社会に大きくアピールしたことです。原告がテレビや新聞などのマスコミに取材され、全国に発進され世論づくりに大きく貢献しました。この現場の声が圧力となり、政府も最低賃金の引き上げを渋々ながら進めています。
『最賃裁判』を提訴したのは2011年で、当時の神奈川地方最賃時間額は836円でした。今年の10月からは956円に引き上げられ、この間に138円の引き上げを実現しています。フルタイム(月150時間)に換算すれば、月額2万円以上の賃上げを実現したことになります。そして、裁判で求めてきた「時間額1000円以上」が実現する水準になってきています。
全国一律の確立を
『最賃裁判』は終結しますが、最低賃金引き上げの闘いはますます重要になっています。多くの原告らも証言していましたが、実際には1000円では生活できません。神奈川労連は大会で「ただちに1000円以上、1500円をめざす」ことを決定し、とりくみを進めます。
あわせて全国バラバラの最賃が、日本全体の低賃金構造を生み出し、地域経済の疲弊を招いていることから、全国一律の最低賃金制度を確立することが重要になっています。まともに生活できる最低賃金の確立をめざしてとりくみを強化しましょう。