神奈川労連は、全自治体への訪問懇談活動を11年継続してとりくんでいます。自治体で働くすべての労働者の賃金引上げ、非正規雇用職員の労働条件の改善、「公契約の適正化」を重点課題としてきました。今年も懇談に先立って、「事前アンケート」をとりくみました。今年のアンケートと懇談の特徴点は次のとおりです。
残業代をごまかしている?
自治体職員の残業代単価を算出する際の所定労働時間は大きく分けると、①国家公務員の算出式を用いた2015時間、②自治体職員の実際の勤務時間(1891時間程度)、の2種類となっています。①で算出した場合は、本来の残業単価よりも低い額となります。
民間企業で同様のことが行われれば「労基法違反」となります。その点を指摘し、適正な残業単価とすることを求めました。「問題がある」などの認識を示す一方で、「国に準じている」との回答もありました。
公務員が最賃割れ
もう1つ大問題が。公務員賃金は「高い」と思われがちですが、高卒初任給は表にある通り大変低額です。
自治体に高卒初任給の時間単価を尋ねたところ、表にあるように神奈川の最低賃金額930円を下回る自治体がいくつかあります。
「最賃を下回ることは許されない」との指摘に、「公務員は最賃法の適用除外なので」、「国家公務員に準拠しているので独自に変えるのは難しい」など苦しい言い訳がされました。
この問題は国家公務員も含めた問題であり、神奈川労連では、自治体とともに国に対しても改善を求めていきます。
1000円以上に
非正規雇用職員の最も低い時間額は、相変わらず神奈川県最低賃金930円にはりついていることがわかります。多くの自治体が、最低賃金が引き上がれば、時間額を引き上げると回答しています。「1000円以上にすること」への理解は示しますが、財政事情が厳しいことを口実に先送りしています。
また、休暇制度や各種手当など処遇の改善も求めてきました。
残念ながら、正規職員との格差解消には程遠いのが実態です。いくつかの自治体では、「忌引き休暇」さえも認められていません。正規は有給の休暇、非正規は無給もしくは欠勤。家族を失った悲しみは正規も非正規も同じであり、理不尽な差別です。
税金が消えている
「公契約の適正化」では、公共工事や委託事業の適正な賃金確保の一つとして「公契約条例」の制定を働きかけています。公共工事の設計労務単価はこの数年で平均40%も引き上がっています。しかし、現場の労働者の賃金は10%にも満たない引き上げにとどまっています。
現場労働者の処遇改善として設計労務単価が引き上げられているのに、それが現場労働者に届いていないことは、「税金がどこかに消えてしまっている」ことになります。自治体は税金が適正に使われ、労働者の賃金改善につながっているか、調査する責務があります。
今年の懇談では、「アンケートやお知らせ」など様々な手法で、使用者や労働者へ設計労務単価の周知を徹底することを求めました。いつくかの自治体では、「調査は難しい面があるが周知という点で工夫したい」との回答がありました。また、試行的に賃金調査を実施する自治体も生まれています。
民間にタダ働きをさせる
適正化の点では、「参考見積」にも着目しました。すべての自治体が役務提供などの委託契約の積算基準をもっていません。積算する際に用いられているのが「参考見積」です。自治体職員では積算できないため、民間事業者に「タダで見積り」をさせているのが「参考見積」です。
有償とすることを求め続けるなかで、多くの自治体が「問題指摘は理解できる」、「研究したい」など前向きな姿勢を示していますが、「イヤなら断ってもらって結構」との強弁もありました。