判断を〝逃げた〟裁判所
最低賃金額を1000円以上にすることを求めた史上初の「最低賃金裁判」について、2月24日、横浜地裁第1民事部(石井浩裁判長、徳岡治裁判官、吉田真紀裁判官)は、原告らの訴えを却下する判決を言い渡しました。
この判決は、地域別最低賃金の決定過程における重大な問題点に関する判断を回避するものであり、裁判所・裁判官が、行政の誤りを是正し、国民の基本的人権を保障するという、自らの役割を放棄するに等しい極めて不当な判決です。
まともな主張をしなかった国
11年6月に第1次提訴50人、その後第5次まで総数133人もの大原告団で、実際に低賃金で働く労働者が初めて声をあげたのが「最賃裁判」です。毎回の法廷で原告自らが、最低賃金ぎりぎりで働き生きることにより命や健康が破壊される深刻さ、自立も結婚もできない、友人との付き合いや趣味など社会的文化的な生活ができないなど、赤裸々な実態を語り、根本原因である異常な低額最賃の引き上げを求めてきました。
裁判では、「門前払い・裁判即時終結」を求める被告・国に対して、弁護団は「訴えの適法性」の論陣を張り、最大の論点である「最低賃金と生活保護の比較計算の5つのごまかし」と、国の裁量権逸脱を徹底的かつ多角的に立証してきました。国は最後まで「門前払い」を主張の大半に割き、「国に広大な裁量権がある」、「手続きは踏んでいる」と繰り返すばかりで、原告の主張にかみ合った反論は全くなされませんでした。
職務を放棄した判決
今回の判決は、国の主張を認め、「5つのごまかし」など実質的な判断をすることから逃げ、個々人が「最低賃金引き上げを裁判で争うことができない」としたものです。
さらに判決では、生活保護などの施策があるので、「一定の処分(最賃引き上げ)がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」はないとしており、原告の実態をまったく無視しています。
実質的な判断を行えば、最低賃金の決定過程の違法性が明らかになるにもかかわらず、これから逃げたことは、裁判所・裁判官が職務を果たしていないと言わざるを得ません。
闘いを継続
最賃引き上げの直接的影響を受ける労働者は増大し、昨年10月の神奈川地方最賃18円引き上げでは、過去最高の19・2%(約76万人)の県内労働者の賃上げに結びついています。「最低賃金1000円以上!」というささやかな原告の訴えは、待ったなしの要求です。
神奈川労連は、生計費原則の最賃額実現、全国一律最低賃金法の立法化の運動を、すべての労働者・国民との連帯で闘いつづける決意です。
上の写真:記者会見で原告からは控訴の決意が語られた。