賃金や労働時間、休暇といった労働条件などの最低基準を定めている労働基準法(労基法)。これを破壊し、時計の針を100年前に戻すような、働くルールのない職場・社会をつくる策動が進められています。
今の労働基準法においても、労働時間の上限が40時間、36条の規定で過労死ラインぎりぎりの時間外労働まで労使協定によって可能なことから、日本の労働時間は長くなっています。
本来であれば、労働基準法の規制を強化し、労働時間を大幅に短縮して、ジェンダー平等の実現や少子化の克服につなげていくことこそが求められています。
財界が後押し
しかし、今年の1月に厚生労働省が設置した「労働基準関係法制研究会(労基研)」では、労基法を破壊するような議論が行われています。
議論を後押ししているのが財界・日本経団連です。発表した労働法制に関する提言では、「労使自治を重視し法制度はシンプルに(細部は当事者の労使に委ねるべき)」などとしています。
労基研では、「結論は決めていない」としながらも、財界の意向に沿った議論が行われています。
デロゲーション
キーワードが、聞きなれない「デロゲーション」です。労働組合や過半数代表者の同意があれば、労基法の規制を「逸脱」することを認めることです。現在の労基法においても裁量労働制などデロゲーションにあたる条文があります。
労基研では、これを「例外」ではなく「原則」に転換することを議論しています。
「労使自治」と言いますが、労働組合の組織率が16%程度で、多くの職場に労働組合がなく、あっても御用組合という職場もあります。
この状況で、労使合意があれば何をやっても良いということになれば、賃金・労働条件が滅茶苦茶になることは容易に想像できます。
残業代は廃止!?
様々なことが議論されていますが、いくつか紹介します。
労働時間については、「最低基準だから健康確保に限定すればよい」として、一律規制の見直しが議論されています。さらに、割増賃金は時間外や休日・深夜の労働の抑制と補償が趣旨だが、効果が発揮されていないとして、「廃止しても良いのではないか」などと議論されています。
労働組合のある職場では、労使協定を締結し、労働条件の前進などをはかっています。この協定方式(同意権)をなくす発言も飛び出しています。
監督行政の見直しについて、「過剰規制になっていないか」、「市場原理で企業を誘導すべき」などとして弱体化を狙っていることも特徴です。
いかに企業などが監督行政を嫌っているかを反映した議論であり、労働組合としては逆に強化を求めていくことが必要です。実際に国際的に見れば監督官の人数は極めて少なく、大幅に増員することこそが求められています。
職場からの闘いを
今後のスケジュールは明らかにされていませんが、労基研はすでに相当回数が開催され進捗は早まっています。25年早々から法案化にむけた審議会にかけられる危険性もあります。
神奈川労連としては、危険性を学びながら、職場からのとりくみを重視します。職場や労使関係の実態を明らかにして、労基法破壊ではなく、改善させる必要があることをアピールします。
そして、職場での団体交渉などを通じて要求を前進させ、デロゲーションなど必要ないことを示していくとりくみを進めていきます。