生きていくためには、最低限の所得が必要です。労働者の生涯の所得を保障する基盤が、最低賃金・年金・生活保護であり、神奈川労連は、『25条共闘』として一体にとりくんでいます。
財政方式を争う
2012年の年金法の改悪により、年金額が2・5%も削減されたことに対し、神奈川でも年金者組合の組合員255人が原告となって提訴し、地裁では22年7月に不当判決が出されました。高裁においても6月6日に、不当判決が出されました。
全国の裁判では、年金受給権を侵害し、憲法25条(生存権)、29条(財産権の保障)などに違反すると主張。さらに神奈川訴訟では、公的年金制度の財政方式について、制度発足時の積立方式が根本的に変更された事実がないことを争い、賦課方式(現役世代が今の年金支給額を負担)に変更したことを前提に国が行った年金削減が違憲であることなどを主張してきました。
無理のある判決
東京高裁民事17部(吉田徹裁判長)の判決は、積立方式を維持するための水準を下回る保険料率が極めて長期間継続してきたことから、「積立方式が堅持されていたとみることは困難」とし、年金法改悪が賦課方式を前提とした制度設計を行ったからといって違憲・違法ではないとしました。
しかし、制度本来の運用が行われていない(積立金が足りない)という事実をもって、何の説明もなく制度そのものが変更されたということは、あまりにも無理があります。積立方式が続いていると認めれば、原告らの主張が正しいことになり、それから逃げるために無理やりこじつけた判決と言わざるを得ません。
公的年金制度は、「少子高齢化では世代間不公平が生じる」ことを見越し、あえて賦課方式を避け、将来の給付原資を積み立てる積立方式の仕組みとして創設されました。その後、一度も制度変更の説明がされたことはありません。
何よりも積立方式である証拠が、年金保険料の約200兆円にものぼる積立金の存在です。賦課方式であれば、これだけの積立はありえません。
制度の本質を否定
高裁判決は、さらに問題があります。それは、公的年金制度について、「憲法25条の保障する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を直接保障する制度と解することはできない」とし、本質そのものを否定していることです。
国民年金法第1条では、「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基づく」と規定しており、明らかに法律を逸脱する判決であり、許されません。
年金者組合神奈川県本部では、不当判決を許さないために、最高裁に上告して闘うことを決定しています。