神奈川労連は、第39回定期大会を9月10日に横浜市内で開催し、代議員・来賓・役員など約150人が参加しました。報告・提案、討論を行い、すべての議案を全会一致・拍手多数で確認しました。今年度は役員選挙がないため、役員の変更はありませんでした。
バージョンアップ
大会は、神田副議長(自治労連)の開会あいさつで始まり、大会議長に全労連・全国一般の稲垣代議員と川崎労連の児玉代議員が拍手で選任されました。主催者を代表して住谷・神奈川労連議長は、「団結をさらに発展させ、労働者の生活改善や、憲法9条を守り核のない平和な世界をめざして奮闘しよう」と呼びかけました。
来賓として、全労連・黒澤事務局長、神奈川県・西海労働部長、自由法曹団・藤田弁護士(支部長)、日本共産党・畑野前衆議院議員と大山県会議員から、挨拶を頂きました。
全労連の黒澤事務局長は、23春闘において「闘う労働組合のバージョンアップ」をスローガンに、ストが議論され実行されたこと、要求の力で組織拡大を進めたことなどを強調。さらに前進させるために「職場の日常活動を活性化させよう」と訴えました。
重要な役割
議案提案は、運動方針案と秋年闘争の具体化について山田事務局長、財政関係の報告と提案を神田事務局次長、会計監査報告を笠原会計監査が行いました。
運動方針案では、冒頭にコロナ禍や物価高騰、戦争と大軍拡など情勢が大きく動くなかで、改めて神奈川労連と構成組織の役割について提起。アテネ・フランセ労組やそごう・西武労組のストライキ、アメリカで労組の支持が大きく広がっていること、などにも触れながら、①組合員とすべての労働者の要求前進、②労働者・県民の苦難・困難を打開するためにともに闘う、③憲法を蔑ろにして国民を苦しめる政治の転換、の3点で重要な役割があることを強調しました。
運動の重点は4点
そのうえで、大会までの1年間の運動で勝ちとってきた成果や教訓を確認し、また、克服が求められる課題も明らかにし、今後1年間の運動の重点を提案しました。
運動の重点は、①大幅賃上げ、最賃1500円・全国一律制度、②組織の強化と拡大、③憲法を活かし、いのち・くらし・雇用を守る、④要求を前進させるための政治・行政の実現、の4点を提案。
財政提案では、厳しい状況であることを率直に報告し、あわせて運動方針案を裏付ける財政確保をはかることを提起しました。
討論では23人が発言(2面参照)。実践や教訓などに基づき議案を豊かに補強しました。
討論のまとめの後に、採決で議案を確認。争議組合・争議団の紹介、特別決議・大会宣言の提案と確認がされ、柏木副議長(医労連)が閉会あいさつを行い、最後に、住谷議長の「団結がんばろう」で大会を終了しました。
(上の写真)150人以上が参加して熱心な討論を行った神奈川労連第39回定期大会
住谷議長のあいさつ(要旨)「神奈川労連の役割、団結で築いた成果」
神奈川労連幹事会を代表して、ご挨拶申し上げます。
労働組合は数とともに、仲間の団結によって大きな力を発揮します。大会議案では、改めて神奈川労連が果たしてきた役割とは何か、団結の力で築いた成果を記述しています。
神奈川労連に加盟する様々な職種や産業の組合は、組合員の要求実現にむけ奮闘しており、様々な成果、教訓、課題があります。それらを共有し学びあうことで、各組織の運動を発展させることが、ローカルセンターの役割です。
全労連・神奈川労連は、産別と地域組織が結びついた運動が特徴です。地域組織は、職場・現場を支え、地域と職場が両輪となり、地域組織の強化につながります。地域組織それぞれに特徴があり、成果を築き、また課題も抱えています。各地域組織からの発言もお願いします。
総括と運動方針の特徴
1年間の総括では、まず、県知事選挙のたたかいです。「明るい神奈川県政をつくる会」に結集し、各組織が奮闘しました。気候危機に関わって、運動が前進し、県内の新たなネットワークづくりに発展しようとしています。今後の大きな運動に発展させていくのも、神奈川労連の役割です。
憲法を無視した政治は、常軌を逸しています。国民の声、生活に背をむけるだけでなく、いのちを奪う政治です。ノースドックは、米軍新部隊の配備によって基地の恒久化、戦争の拠点となろうとしています。県民・市民の願いに反する配備を、阻止しなければなりません。
新自由主義政策が、労働者・国民の権利を奪い、規制緩和が推し進められています。いのちや健康も儲けの対象としています。ついには武器を輸出する国になろうとしています。
悪政に対して、マイナ保険証やインボイス、入管法などで、これまでにない共同が大きく発展しています。下支えしているのは、労働組合です。次のステップにどのように移行していくのか、神奈川労連・労働組合の役割が問われています。
方針では、23国民春闘のとりくみを発展させ、労働者の賃金と労働条件の改善を実現するたたかいを提起します。そして、誰もが生きる喜び、働く喜びを感じられる社会をめざします。
今、労働者は分断の攻撃が仕掛けられています。団結の力で跳ね返そうではありませんか。
当事者が参加する運動が求められています。非正規労働者など様々な課題を抱える当事者に寄り添い、当事者が主体となった運動づくりも提起しています。
神奈川労連がとりくんだ最低賃金裁判は、「やれるのか、勝てるのか」と言われましたが、当事者・原告100人以上でたたかいぬきました。そして、ついに岸田首相に最低賃金1500円と言わしめました。最賃闘争の成果です。
これからも、団結をさらに発展させ、県民・労働者の生活改善、憲法9条を守り、改憲発議を許さない、核のない平和な世界をめざして奮闘しましょう。
ともにがんばりましょう。
23人が討論で発言
討論での発言について、テーマごとに概要を紹介します。
闘ってこそ前進
議案の総括でも運動方針でも強調した、春闘や賃上げ・労働条件改善などについて、港湾労組は、「大幅な賃上げ・底上げの要求を明確にして、ストを背景に統一要求も引き上げて闘った」こと、回答についても職場を回って議論し、納得がいかない職場では全員団交を申し入れるなかで、嫌がる使用者が大幅賃上げを行うなどの成果や教訓を報告。「闘ってこそ前進できるし、原則や基本が重要。来春闘へ教訓を活かしていきたい」と決意を述べました。
ユーコープ労組は、要求提出交渉と5回の団体交渉に職場から組合員が毎回40~63人参加し、のべ約200人の仲間が切実な要求を自らの言葉で迫ったことを紹介。当初は不誠実な回答・対応であった理事会の態度を、最後は「賃上げできないのは経営の力不足」と発言するまでに変えさせ、一定の前進回答を獲得した経験を報告しました。
画期的な成果
公務労働者の賃金について、自治労連・横浜市従からは、正規と非正規が一体となったとりくみで、横浜市での会計年度任用職員の期末手当の引き上げという画期的成果や、制度改善により勤勉手当の支給が可能になる成果が報告されました。
三浦市職労からは、昇給・昇格の頭打ちを改善させ仲間の賃金引き上げの実現をめざすとりくみが紹介されました。また医労連は、賃金に査定が導入されることについて、職場に大きな害悪となることを告発し、闘うことの重要性を訴えました。
賃上げ・底上げに重要な最低賃金のとりくみについても、ユーコープ労組や電機情報ユニオン、全神奈川地域労組協議会、川崎労連から発言がありました。
また、年金者組合からは、年金引き下げ違憲訴訟の争点を紹介しながら、生活保護水準を下回る年金の改善が訴えられました。
信じられる場を
組織の強化拡大にかかわっては、横三労連から労働学校を4年ぶりに再開し、新しい組合の仲間を中心に10数人で全労連わくわく講座を受講することが報告されました。
女性センターの特別代議員は、神奈川で開催された全国非正規集会にむけて、未加入の非正規労働者一人ひとりにチラシを手渡して対話するなかで2人が組合加入した経験を紹介。そして、「非正規労働者には、社会への信頼感を持てずにいる人が多いのではないか。信じられる場をつくっていきたい」と発言しました。別の女性センター特別代議員は、女性のための相談会などをとりくみ、新たなつながりをつくっていることを報告しました。
三浦市職労からは、サークルの先輩職員や当局、労金などとも協力して、新採用者に確実にアプローチし組織率90%以上を保っていること、医労連からは、新しい組合が結成されていること、地域労組協議会からは、事務所を確立し労働相談センターとの連携を強化するなかで、相談からの組織化が進んでいることが報告されました。
あたたかい手を
雇用確保や争議の闘いも多くの発言がありました。
建交労からは、ヤマト運輸の配達員など3万人の契約解除が1月末までに行われることを告発し、「あたたかい手を差し伸べて」と、神奈川労連や全国の仲間の運動でとりくむことが呼びかけられました。また、軽貨物労働者がインボイスの導入によって廃業や不利益を被ることを、アンケート結果に基づき紹介し、インボイス制度の中止・廃止を強く求めました。
自治労連や女性センターからは、公務の非正規労働者に雇用期限を設けて公募を行う問題が発言され、公募によらない雇用継続を求めるとりくみの必要性が強調されました。
電機情報ユニオンは、大企業・日立による不当な雇用継続拒否と闘っていること、ジョブ型雇用がリストラに悪用されている実態を告発し、闘う決意を述べました。
労働争議では、不当な解雇に対し、ストで闘っている横浜地区労加盟の東海大学教職員組合やアテネ・フランセ労働組合から発言があり、東海大ではストを闘うことによって1人が職場復帰を勝ちとり、その講師の授業がすごい人気で多くの学生が集まっていること、アテネ・フランセでは生徒やOBが応援し共同が広がていることなどが報告されました。
使用者からの不当労働行為と県労委で闘っている全国一般のレヂテックス分会や医労連・全労災病院労組、3つの争議を闘ってきた川崎労連などから、報告と支援の訴えがありました。
深刻な労働者不足
新自由主義による公共にかかわる現場への不当なしわ寄せと労働者不足に対し、改善させる闘いも発言されました。
全国一般と福祉保育労からは、保育や介護の職場で子どもや利用者の人権や命が守れない制度・実態になっていることを明らかにし、自治体や国に改善を求める運動を進めることが述べられました。
自交総連は、公共交通としてのタクシーを破壊するような、ライドシェアを容認する神奈川県知事の発言を厳しく批判し、タクシー労働者の賃金・労働条件を確保してドライバーを増やすことの必要性を強調しました。
私教連からも、教員不足が深刻になり、非正規教員が40%や50%を超える学校があることも紹介。教育予算を増やす必要があり、私学助成を拡充する署名への協力を訴えました。
西湘労連は、国のデジタル田園都市構想が小田原市で進められようとしていることを警戒し、困っている市民の要求に応えられる市政の必要性を強調。
女性センターからは、県知事の人権侵害問題を許さないとりくみが報告され、ジェンダー平等を地方議会から進めるとりくみの前進も紹介されました。
平和こそ最大の福祉
平和にかかわっては、横三労連や県中部労連から米軍基地の現状ととりくみ、また、PFASの問題について言及されました。
自治労連からは、ノースドックへの新部隊の配備について、署名を中心としてとりくむことが述べられ、福祉保育労からは、「平和こそ最大の福祉」という立場で運動を進める決意が語られました。