すべてを正当化
第13回裁判期日(2月)と第14回(6月)、第15回(7月)に証人尋問が行われました。
原告Aさんが所属した剣道部の主将は、練習中に背中を竹刀で叩いたのは「声掛けの合図、シゴキではない」。顧問教官は、いじめの実態について「知らぬ存ぜず」、Aさんの精神疾患発症や自傷行為は「ストレスに弱い学生だったから」など、いじめや暴力のすべてを正当化しました。
担任教官は、日常的に下級生が上級生のAさんに「タメ口」や嘲笑い、人格否定を続けたことは、「口の悪い生徒」、「カラカイのレベル」としていじめを放置。上級生は、休憩時間や訓練後に繰り返し、執拗にAさんを呼び出し、暴言を吐き続け追い詰めたことは、「なかった」と言いのけました。
尋問では防大の不可解な対応も明らかになりました。いじめを記録した書面について担当教官は「指導記録は書面で引き継ぐので、パソコンのデータは削除した。書面の行方は不知」。いじめが起因の暴力事件も「喧嘩両成敗」としながら原告は「留年」、相手方は「進級」させています。
パソコンを介して
7月12日、原告と父親の尋問が行われました。父親は尋問の最後に「心のキズは見えない。回復したように見えるが、電話着信音がイジメを思い出させ、強い拒否反応とショック状態となる。そして今も声が出せないのが現実」と述べ、いじめ当事者と防大の責任と謝罪を求め、「二度と被害者を出さないで欲しい」と訴えました。
原告Aさんは、「声が出せない」ため、パソコンを介して「文字」で証言。防大ではイジメやシゴキ、人格否定が「当たり前」とされ、我慢できない、耐えられない「ヤツ」は人として扱われない。裁判所には「防大の当たり前が『異常』で、許されないと判断して欲しい」と訴えました。
防大では、毎年100件以上の服務規律違反が起き、暴行・傷害など刑法犯違反相当の事案が数十件にも及びます。いじめ以外にも自死、ハラスメントなど訴訟が相次いでいます。
次回は、8月28日10時30分から、原告への反対尋問が行われます。多くの仲間の傍聴で原告の激励をお願いします。
防大いじめ裁判とは…
原告Aさんは、防衛大学校1学年時から上級生や同級生、さらに下級生による卑劣ないじめを受け続けたことにより精神疾患を発症。全寮制のため24時間逃げ場なく追い詰められ、3学年時には「言葉を発することができなくなる」。教官に相談したところ、いじめの解消でなく逆に退校命令。2019年9月、いじめの加害者だけでなく国・防大に損賠と再発防止を求めて横浜地裁に提訴。