実施方法を工夫
今年の自治体懇談行動を8~9月に実施しました。コロナ禍のため、懇談項目や人数を最小限に絞り、オンライン懇談など工夫もしましたが、期間内に実施できたのは、15自治体でした。残りは年内に実施する予定です。
今年の懇談は、①人事院勧告がコロナ禍で奮闘する公務員労働者の賃金改定なし、一時削減という仕打ちを示したこと、②公共工事設計労務単価が10年間で全国・全職種平均53・4%引き上げられているにもかかわらず、現場労働者の賃金改善が進んでいないこと、この2点を重点としました。
地方自治の崩壊に
賃金課題では、「一時金の削減はしたなくないが、民間準拠で引き下げざるを得ない」など、職員の労苦に反する引下げに戸惑いや困惑を感じる回答が多くありました。改善したいとの思いがある一方で、「国に逆らうこと」による地方交付税の削減を回避するため現状維持もしくは後退せざるを得ない、と漏らす自治体も目立ちました。
国が交付税などで、自治体の自主性を阻害し、運営にも介入する、国の出先機関になりつつあることの危惧を感じました。直近では、会計年度任用職員制度、マイナンバー制度やデジタル化、コロナ禍のテレワークや在宅勤務の強要です。ある自治体では「地方自治の崩壊にもつながりかねない由々しき行為だと」と厳しく述べたのが印象的でした。
最賃割れの初任給
総務省が推し進めた、非正規職員を会計年度任用職員とする制度の導入に困惑する自治体も多くありました。総務省の「任用の線引き」によって、廃止や民間委託、有償ボランティアに移行せざるを得ない非正規職種を、どのように維持するか悩み、やむを得ず廃止して委嘱の形をとったり、「国が示した賃金では現状より下がってしまうので独自に上乗せした」など苦肉の策を行っています。
高卒者の採用初任給の「最低賃金割れ」も深刻です。「初任給を引き上げ全体の給与体系を見直したいが、引き上げることで地方交付税が削減されてしまう」、「最賃割れ賃金で働く青年労働者に申し訳ないと話している」と述べる自治体担当者もいました。
現場に周知
契約関係では、コロナ禍で自治体の指定管理や民間委託の施設が「休館」、事業者は運営・委託費を満額受けとりながら労働者には休業手当(賃金の6割)しか支払わない案件の相談事例を紹介しながら自治体の調査や是正を求めました。「そうした事態が生じているのであれば不当利得、厳しく対処したい」と回答がありました。
設計労務単価の引き上げが、現場労働者の賃金改善につながっていないことについては、「受注者の責任、労使の問題」という従来の回答を繰り返す自治体がある一方で、「毎年指摘を受け問題意識は持っている」、「国土交通省のポスターを掲示することは可能」、「業者団体に掲示物は渡してあるが現場に貼られているか確認してみたい」、「設計労務単価の適用現場であることを現場に周知することは必要と考えている」などの回答がありました。
労務単価が50%以上も引きあがっているのに、現場労働者の賃金改善が10%にも満たないことは、「税金を誰かが抜いている」との問題指摘がやっと自治体にも浸透したようです。