現行の最低賃金制度は、①労働者の生計費、②類似する労働者の賃金、③事業所の賃金支払い能力を考慮していますが、実際には中小零細企業の支払い能力が重視され、労働者の生計費はまったく考慮されていないものになってしまっています。
そのため、生活保護基準より低い賃金しかもらえないというおかしな状況が生まれてしまっているのです。
生活保護基準計算・厚労省の5つのゴマカシ
- 労働時間の水増し
生活保護基準は月額ですから、最低賃金と比較する場合時間額に換算します。その際、正月も夏休みも祭日も一切休まず、完全週休2日で働くと月平均173.8時間になるとして、実際の155時間程度より大幅に水増ししているため、時間当たりの金額が低くなります。 - 勤労必要経費不算入
生活保護では働く場合に必要な被服代、教養を身につける費用などをプラスしていますが、それを一切認めていません。 - 最高額にすべきなのに平均額にした生活扶助費
生活扶助費は同じ県内でも都心部と周辺部で差をつけていますが、この計算では人口比で相乗平均した額にしているため、都心部に住んでいる人は、生活保護基準より少なくなります。 - 上限額にせず実績平均額にした住宅扶助
生活保護受給者にはなるべく安い住宅に住ませるようにしていますが、基準額の上限額ではなく支給額の平均値で計算しているため、生活保護を受けている人の約半分より最賃額が低くなります。 - 全国最低の公租公課率を使用
税や社会保障の保険料累進性となっており、収入が少なければその割合は小さくなります。厚労省の計算では割合の一番低い地方の率を使って、租税公課を含む全体の金額を低くしています。
さらに、本来の最低賃金の趣旨とは逆行する悪例も頻発。「最低賃金を払っていればいい」と労働者の賃金を切り下げる事業者も出てきています。
低い最低賃金額によって、最低賃金制度が賃下げの道具になってしまっている現実──臨時・パートなどの賃金は、下へ下へと押し下げられ、その結果、労働者全体の賃金水準が下げられてしまうという悪循環の原因にもなってしまっています。
日本の賃金が低い主な原因は、最低賃金があまりにも低すぎること。超低額の最低賃金の重石を取り除くことが、全体の賃金引き上げにつながると、私たちは考えています。
今の最賃は低すぎます!
最低賃金額は、毎夏、最低賃金審議会で決められます。
労働組合の要求で改善させていますが、それでも東京で1041円(※2021年10月現在)、低い地方では820円。フルタイム就労しても額面で月額16万円強の最賃では低賃金の防止にならず、労働者の4人に1人は年収200万円以下となり、平均賃金も激減しています。 いったん低賃金の仕事に就くと、そこから抜け出すのは至難の業。「スタート地点にすらつけない。一生このままかと不安」といった声が広がっています。
先進諸国の最賃は全国一律で月額20万円、時間額1300円が普通です。アジア諸国でも経済発展につれ、最低賃金を大幅に引き上げています。日本でも不況打開と被災地の復興・生活再建のために、中小企業の経営支援の政策とあわせ、生活できる賃金保証が必要です。
(Twitter @inoueshin0より引用)
最賃アップと格差是正にはこんなメリットあり!
- 地域で消費が拡大⤴
最賃アップで生活関連の消費を増やせば、地域にお金が回ります。 - 男女の賃金格差が縮小⤴
低賃金雇用の中心は非正規で働く女性。最賃アップは男女の賃金格差を縮めます。 - 地方で働く若者が増加⤴
低賃金では自立できないと、地方から都会へ若者が流出。 最賃アップで格差是正をすれば、故郷で働けます。