神奈川の審議会答申を受けて
2024年10月から適用予定の新たな最低賃金額の目安が、2024年7月25日開催の第69回中央最低賃金審議会で答申されました。 最低賃金引き上げ額の目安は、都道府県の経済実態に応じて分けられたABCの3ランクごとに提示されますが、2024年度はすべてのランクで一律50円の引き上げ額が示されました。
中央最賃審の「目安」を受け、神奈川地方最低賃金審議会は5日、2024年度の県内最低賃金について、現行から50円(4.49%)引き上げて時給1162円に改定するよう神奈川労働局長に答申しました。引き上げ幅は、現在の方式となった2002年以降で過去最大となります。
神奈川地方最低賃金審議会で使用者側委員は、「長引く物価高騰や人手不足により賃上げが必要であることは認識している。物価高騰に伴う価格転嫁が容易でない下請け構造など中小企業が抱える課題は多い。目安額50円を引き上げるとしても、中小企業がきちんと事業を継続できるよう国としての支援策について十分議論すべき時である」と述べ、一方労働者側委員は、「神奈川県は非正規雇用労働者の比率が非常に高く、おのずと最低賃金の影響率も高い。労使交渉による賃上げができるのはごくわずかであり、圧倒的多数は最低賃金の改定によって賃上げが図られている。セーフティーネットとしての最低賃金の異議は重要だ」と見解を述べました。
最低賃金は「その地域の労働者の生計費、賃金、事業の支払い能力の3要素」で決めていますが、神奈川地方最低賃金審議会では労働者の生計費の指標として、総務省の「全国消費実態調査」を基に人事院が算出した「標準生計費」を挙げています。これによれば令和5年における18歳男性単身者の標準生計費は148,190円です。住居費や食費、被服費、保健医療、通信費など生活に必要な経費を差し引いた残りの8,470円が小遣い、交際費としていますが、現実にこの金額で生活できるでしょうか?労働者の生計費は年々増加しています。社会保険料や税金などの負担も増えて、ここ数年は物価高騰により、私たちの生活はますます厳しくなっています。最低賃金法の目的は「労働者の生活の安定」ですから、労働者の生計費をきちんと算出して、これに基づいて最低賃金を決めることは当然です。審議会は、科学的な最低生計費調査に基づいた労働者の生計費と労働者の賃金で最低賃金を決めるべきだと考えます。全労連と地方組織は、全国28の都道府県で「最低生計費試算調査」(約4万8千人)を取り組み、その結果から「8時間働けば人間らしく暮らせる」には、全国どこでも月額24万円(時給1500円)以上必要であることを明らかにして、最低賃金1500円の実現をめざして活動しています。
私たち神奈川労連は、5日の答申に異議ありとして神奈川労働局長に異議申出書を提出する予定です。
2024年度・神奈川地方最低賃金審議についての要望書
神奈川地方最低賃金審議会 会長 赤羽 淳 様
神奈川労働局 局長 藤枝 茂 様
2024年度・神奈川地方最低賃金審議についての要望書
引き続く物価上昇・高止まりによって、実質賃金は26か月連続マイナスとなり、労働者全体の生活は苦しさを増しています。「1万円の賃上げがあったがとても足りず、ダブルワークするしかない」というような声も届いています。また、春闘において大企業の正規労働者には一定の賃上げがあったとされていますが、非正規雇用労働者の賃上げは不十分であり、労働者全体の賃上げや実質賃金プラスへの課題となっています。
神奈川労連は、非正規雇用労働者の賃金を底上げし、労働者全体の賃金を引き上げていくために、最低賃金の大幅引き上げは決定的に重要であると考えています。最賃の引き上げは、労働者の消費購買力を引きあげ、企業経営や地域経済にも良い影響を及ぼすと考えます。
また、同一労働同一賃金や事業者の公正競争などの観点から、神奈川労連は全国一律制度の確立を求めています。世界のほとんどの国は、全国一律の最低賃金制度となっており、日本のような狭い国土で全国バラバラなのは異常です。全国一律の制度は、神奈川だけで決められるものではありませんが、東京に次いで労働者数の多い神奈川の審議会からの意見は大変重みがあると思います。ご議論いただくよう要望します。
最低賃金引き上げによる中小企業への影響を懸念する声もあります。問題は、政労使とも必要性の認識が一致している賃金を引き上げることにあるのではなく、賃金上昇分を転嫁できないことにあることは明らかです。賃金上昇分をきちんと転嫁できる公正取引の実現・実効性の担保や、中小企業支援策の抜本的な強化について、神奈川地方最低賃金審議会として、具体策も含めて審議して頂くことを要望します。
以上の点を踏まえ、2024年度の神奈川地方最低賃金改定の議論にあたって、下記事項について審議会で議論し実行してていただくよう、要望します。
記
1.神奈川地方最低賃金時間額を「今すぐ1500円以上」にしてください。
2.本来あるべき、生計費を満たす最低賃金額の水準についてご議論をお願いします。議論の内容を広く県民に周知することを検討してください。
3.地方ごとの最賃額の格差の是正や、全国一律最低賃金制度について議論していただき、関係機関に意見を具申してください。
4.神奈川労働局と国など関係機関に、賃金上昇分の価格転嫁の実現をはかる施策の実行や、中小企業支援策の抜本的強化の実施について意見を具申してください。
2024年7月19日
神奈川県労働組合総連合
議 長 住 谷 和 典
最低賃金アンケート
NEW!「2023年神奈川地方最低賃金審議会答申について」
神奈川労連は、神奈川県の最低賃金は10月1日施行予定の「2023年神奈川地方最低賃金審議会答申について」異議申し出を行います。
詳細はこちら
23/3/4 労使研弁シンポジウム(前編)
23/3/4 労使研弁シンポジウム(後編)
最低賃金 大幅引き上げを 目指す 労使研弁シンポジウム
日時:2023年3月4日(土)14:00〜17:00
会場:建設プラザかながわ 2階ホール
私たちは、最低賃金の大幅な引き上げを実現するために、Fight For1500神奈川実行委員会を結成し、労働組合、団体、個人と力を合わせた運動を進めています。
今、最低賃金の引き上げは労使が共闘して取組むべき運動です。最賃の引き上げには労使ともに様々な課題があります。
それぞれの課題を共有し、打開の展望を学びながら、力を合わせて最低賃金1500円を目指した運動を構築するために、シンポジウムを開催します。多くの方に参加していただくことを心から呼びかけます。
プログラム:
14:05〜 講演
「最低賃金の呪縛と日本経済の混迷-賃金と雇用の二者択一論を超えて―」
専修大学 経済学部 准教授
山縣宏寿 氏
(労働総研 常任理事、賃金・最低賃金問題研究部会長)
15:20〜 パネルディスカッション
使用者も 労働者も 研究者も 弁護士も一緒に考える
パネリスト
使用者: 富塚昇さん
(神奈川県商工団体連合会会長)
研究者: 山縣宏寿さん
(専修大学経済学部准教授)
労働者:星めぐみさん
(ユーコープ労働組合)
弁護士:飯田伸一さん
(神奈川県弁護士
会貧困問題対策本部反貧困ネットワーク)
主催:Fight For1500神奈川実行委員会
事務局:横浜市中区太田町6-84-2大樹生命ビル4F(ユーコープ労働組合内)
Tel 045-319-4891
mail abe@uctu.jp
担当事務局:安部
私たちにできること!
①労働組合に入って、要求を実現しよう!
☎ 0120-378-060
②ツイッター(最賃くまくん)をフォロー&リツイート
③ハッシュタグ #最低賃金を1500円に で想いをSNSで発信しよう!
④その他、神奈川労連までお尋ねください
2021年7月15日、神奈川地方最低賃金審議会・神奈川労働局へ、
「2021年度神奈川地方最低賃金改定にあたっての要望書」を
提出しました。
神奈川地方最低賃金審議会
会長 盛 誠吾 様
神奈川労働局
局長 川口 達三 様
21年度・神奈川地方最低賃金改定にあたっての要望書
コロナ禍は収束せずに、「まん延防止等重点措置」に基づく要請が継続し、飲食業や宿泊業などを中心に影響が及んでいます。一方で、全体の経済活動は通常に戻りつつあり、史上最高の利益をあげる企業もうまれています。
今年1月27日に経団連の中西前会長は「日本の賃金水準がいつの間にか経済開発協力機構のなかで相当下位になっている」と発言しました。いくつかの要因があると思いますが、神奈川労連は日本の最低賃金が低い水準にあることが大きな要因と考えます。コロナ禍においては、最低賃金近傍で働いていた非正規雇用労働者が貯えをすることができず、休業などによってたちまち生活困窮に陥る事態となりました。年間2000時間働いても、年収200万円そこそこにしかならない最低賃金の水準を、憲法25条が定める「健康で文化的な生活」が実現できる水準まで早期に引き上げることを強く求めます。
また神奈川労連では、コロナ禍のダメージから経済を回復させ、個人消費の回復による景気の好循環をつくっていくための施策として、最低賃金を大幅に引き上げることが必要だと考えています。日本と同様またはそれ以上に新型コロナウィルスの感染拡大が深刻であった、イギリスやドイツ、フランス、アメリカの一部自治体などでは、最低賃金が引き上げられています。
さらに、賃金格差を一つの要因とした疲弊する地域経済の回復や、事業者の公正競争の観点などから、全国一律の最低賃金制度の確立や、最低賃金引き上げに中小零細企業などが対応できるよう、政府による抜本的な支援策拡充や、公正取引実施の強化なども重要だと考えています。
以上の観点から、下記事項について神奈川地方最低賃金審議会で議論していただくよう、要望します。
記
1.神奈川地方最低賃金時間額を早期に「時間額1500円以上」にすること。生計費を満たす最低賃金額の水準を議論していただくこと。
2.地方ごとの最賃額の格差の是正や、全国一律最低賃金制の確立を議論し、中央最低賃金審議会と厚生労働大臣に意見を具申すること。
3.中央最賃審議会と厚労大臣に、中小企業支援策の抜本的強化を求めること。
2021年7月15日
神奈川県労働組合総連合
議長 住谷 和典