物流倉庫で数か月、日雇い派遣で週3日ほどの仕事をしていた労働者。5月のシフトが決まっていたのに、4月の終わりに、派遣元の営業担当から「来月の派遣就業の予定はキャンセルになった」と一方的に通知され、実質的に解雇されたという事案。どうやら派遣先から労働者の差し替え要求があり、派遣契約を失うことを恐れた営業担当が急遽、その労働者を排除しようとしたらしい。
派遣法に照らせばツッコミどころ満載な話だが、最大の問題は、本人の相談を受けて労働組合から文書を送るまで、派遣先責任者はもとより、派遣元責任者も、まして元先の事業主も、この解雇事案について一切、知らなかったという点である。
派遣法は派遣元責任者と派遣先責任者が連絡調整して、労働者の保護を図ることを定めている。しかし、法律には「選任」の義務はあるものの、派遣元と派遣先の事業主がそれぞれの「選任」した責任者が派遣法上の責務を適法に執行するよう指導管理する義務は定められていない。「選任」さえしておけばいいのだ。そのため、いかに悪質な事案であろうが、派遣元と派遣先の事業主の責任が問われることはないし、行政の指導対象となることもない。
派遣労働に関するトラブルの大部分は、そうした法律の不備に原因があると思われるので、事実確認や責任追及にあたって、派遣元・派遣先責任者の連絡調整がどのように行われたのか、という点に注目することが求められる、今回は相談者の意思が強く、派遣会社が不適切だったことを交渉で認め、謝罪の意思を解決金で示すことや、雇用保険の加入基準を満たしていたので雇用保険加入を派遣会社にさせることで解決となった。