神奈川労連加盟の旅客業や運送関係の労働組合では、「新型コロナ」の影響で雇用や事業継続が危ぶまれるなかで大きな成果を勝ち取っています。労働組合が知恵と力を合わせて労働者の権利と生活を守りましょう。
■旅客業関係の組合では・・・内部留保の取り崩し、休業手当100%支給
今年2月からの単月営業収入は前年同月比でマイナスが続き、4月10日時点で既に▲70%と急激な落ち込みとなりました。組合は、「クルーズ船感染」の影響で営業収入が下がり始め時から、春闘要求に加えて「新型コロナ対策緊急申入れ書」を提出。雇用の確保とともに現場の声を反映した営業対策などを求めてきました。
会社からは「雇用の継続は守りたい」との回答でしたが、具体的な対応策や営業方針は示されませんでした。今月の団体交渉で、具体策の検討を続けてきたが予想を上回る経営上の中で雇用確保を最優先し、「雇用調整助成金の活用や内部留保を取り崩して、休業手当は現行賃金の100%支給としたい」「グループ会社にも働きかけて、一時的な出向や教育訓練制度も活用して、労使一体で困難を乗り切りたい」と回答がありました。
組合は会社に対して繰り返し、「コロナ感染」の先行きが不透明という困難な状況でも活路が開ける営業戦略の提案、行政機関などから雇用調整助成金や各種支援制度の説明を受け効果的な活用を求めてきました。粘り強いとりくみが大きな成果を引き出しました。
「新型コロナ」の影響で顧客発注が大幅に減少する中で組合は雇用と事業継続の危機感を持ち、緊急の執行委員会で次の「緊急申入書」を提出し、団体交渉をすすめています。
①毎日の出勤時に全従業員の検温を行い、37.5度以上の場合は平熱に恢復するまで自宅待機(特別有給休暇扱い)とすること。②非常事態宣言発出中は、業務を極力縮小抑制に努めること。③病院関係に配送する仕事部署では、マスク・アルコール消毒など万全の感染防止措置をおこなうこと。④万が一社内で感染者が出た場合、全従業員のPCR検査を行い、最低14日間の自宅待機(特別有給休暇扱い)をじっしすること。⑤会社業務を休業することになった場合、労使協定の同意約款協定ににもとづき、会社と組合は休業協定を締結し、雇用調整助成金から90%支給を受け、残額10%は会社負担とし、休業期間中は全従業員に100%賃金を保障すること。
■神奈川労連・労働相談センターでは・・・前月比2倍増の相談のなかで、内定取り消し、賃金・生活補償させる
●ある女子大生は、会社から電子メールで自宅待機・テレワークの指示があったが、その後何も連絡がないので電話問合せしたところ、”新型コロナの影響”で日本支社を閉鎖することになったので、内定取り消しとなりますと通告されました。「4社の内定を断って選んだ会社なのにこんな仕打ちは許せません」と怒りの声。会社は外資系日本支社、内定者全員の内定を取り消しました。しかも、日本支社は事業所閉鎖で、役員・事務職員全員は本国に帰国していました。労働相談センターは、電子メールやあらゆる手段を通して、会社役員と連絡を取り、雇用保障などの「緊急申入書」を提出しました。会社役員は「本人と個別相談する」と「交渉」を嫌いましたが、最終的には「電子メールでの英文交渉」を受諾しました。新型コロナが終息するまでは事業を再開することは困難であり「内定取り消し」を撤回することはできない旨の回答てしたが、要求事項の、①賃金補償、②転居費用、③再就職までの生活補償のすべてを勝ち取ることができました。
●労働相談センターには、前月比2倍増のペースで相談が増えています。全国チェーン店やイベント会社などの休業による非正規労働者の解雇や無給を改善させ、雇用確保と賃金支給を勝ち取っています。
■神奈川労連では・・・神奈川労働局と神奈川県へ申し入れ、早急な対策とワンストップを求める
神奈川労連は4月16日、新型コロナウィルスの影響から、県内労働者の雇用・くらしを守るための施策を実施するよう、神奈川労働局と神奈川県雇用労政課に要請を行いました。
要請内容の概要は、「労働者が直接、休業補償を申請できる制度の創設」や、雇用調整助成金制度の改善・拡充と企業などへの周知徹底、ワンストップの相談窓口の設置、解雇・雇止めの防止などです。参加者から、実際に寄せられている労働相談の内容や職場の状況を伝えながら、対応を要請しました。労働局・雇用労政課ともメモをとりながら、要請を受け止めていました。
労働局では、助成金窓口などで電話がつながりにくい状況を認識していること、実務の状況や改善にむけた方向性などについて意見交換。雇用調整助成金については、「緊急相談会」を週末に行うことも紹介され、また、政府が主導する在宅勤務の推進と相談対応業務との兼ね合いなどについても聞き取りを行いました。
組合から、「生活が成り立たない状況がすでに発生しており、スピードが重要」、「特に、非正規労働者の状況は大変であり、対策を強めてほしい」、「思い切った財政措置や人員の配置を」と求め、率直な意見や情報の交換がされました。
県雇用労政課では、県労働センターへのコロナ関係の相談が、うなぎ上りに増えている状況がわかりました。内容的には、「休業」に関するものが過半数、「解雇・雇負止め」は、まだそれほど多くないことも紹介されました。要請側からの「今後は解雇が増えることが予測され、情報収集や指導・啓発の強化を」との求めについて、受け止めていました。また、不当労働行為を長引かせないために、感染防止に努めながらも県労委の審査については工夫して行うよう求めました。