「27円引き上げ」983円改定答申について(声明)
8月6日、神奈川地方最低賃金審議会は、956円から27円引き上げ、10月1日から983円とする答申を出した。神奈川労働局長は、「すぐに最低賃金を1000円以上にしてほしい。時給1500円へ!」という最低賃金裁判元原告と最低賃金ぎりぎりで働く当事者の声に正面から向き合い、神奈川地方最賃審議会の答申を差し戻し、少なくとも1000円以上とすることを強く求め、以下のとおり見解を示す。
まず第一に、983円は人たるに値する労賃ではなく、ワーキングプアを拡大し非正規労働者を貧困に縛り付ける悪魔の鎖、憲法と最賃法違反の「貧困最賃」である。日本で初めての最低賃金千円以上を求めた裁判で、時給1200円でフルタイム働いた手取りの収入が月額の生活保護に達していないことは法廷で国も認めた。生活保護と最低賃金の「逆転現象」は、神奈川はもとより、全国47都道府県全てで解消していない。
第二に、先進国の中でも異常に低い最低賃金に留まっている。今年の中央最賃審議会の引き上げ目安は「3%引き上げの26円、過去最大」と報道された。しかしお隣の韓国は今年16.1%、そして来年1月にはさらに11%引き上げて835円の全国一律での最低賃金引上げを実行する。まだ47都道府県全ての最低賃金改定額は明らかになっていないが、おそらくその8割前後の県が韓国の最低賃金に追い抜かれ、下回る見通しである。ヨーロッパやアメリカの州・市での最低賃金は最高額の東京・神奈川を大きく上回る時間額となっている。
第三に、最低賃金審議会、専門部会の審議の全ての公開をすべきである。この間の推移をみれば、27円の引上げの恩恵を受ける労働者は、県内労働者の約2割=約50~70万人にものぼることが予測される。これだけ大きな影響をもたらす最賃引上げ決定の審議が公開されず、答申にいたる決定経過や根拠が未だに闇の中であることは異常である。今後、最低賃金1000円突破の先の「あるべき最低賃金額」と「有効で使い勝手のよい中小企業支援策」を韓国や諸外国の事例を研究し、中小企業と働くもの双方にウィンウィンとなる建設的で理論的な最賃引上げ審議の内容に転換していくべきである。
第四に、地方間格差を広げ続ける「47都道府県バラバラ最賃」は大問題である。労働者は手取りの収入で生活しており、年間40万円にも上る賃金格差は異常であり、厚労省の格差「率」縮小という説明は詭弁である。この格差は、高い東京・神奈川の抑制ではなく、最低賃金が異常に低い県こそを大幅に引き上げて解決すべきである。そして、全国一律最低賃金制の確立こそが根本的な問題解決になる。
今回の引上げは最低賃金ぎりぎりで働く労働者の「社会的賃上げ」を求める強い声と、労働組合などによる運動の成果である。最低賃金の大幅引き上げ、全国一律最低賃金制の確立のため今後も奮闘する決意である。
2018年8月8日
神奈川県労働組合総連合(神奈川労連)
議 長 福 田 裕 行