2016年2月24日
最低賃金裁判原告団
神奈川県労働組合総連合
(1)本日、横浜地裁第一民事部において、歴史上初めて闘われた最低賃金千円以上を求める裁判の判決は原告の訴えを却下する不当なものが出された。これは、低賃金で苦しむ多数の労働者が、憲法と最低賃金法に違反し生活保護を下回る最低賃金について、裁判所に訴えることも許さないという極めて不当なものである。
(2)2011年6月30日、時給1000円未満で働く当事者が日本の歴史上初めて声を上げた。第1次提訴50人、その後第5次まで総数133人もの大原告団となり、満杯の傍聴席の大法廷で原告意見陳述を行い続けてきた。最低賃金ぎりぎりで働き生きることにより命や健康が破壊される深刻さ、自立も結婚もできない、将来の希望ももてない、友人との付き合いや趣味など社会的文化的な生活ができない、これらの実態を裁判官に赤裸々に語り、その根本原因である国による最低賃金の異常かつ憲法違反の低額放置を断罪し、最低賃金を抜本的にひきあげる歴史的判決を強く求めてきた。裁判を支えるサポーターは、県内はもとより全国に広がって1000人を超え、裁判傍聴支援、署名、カンパなど運動を広げ、新聞・テレビによる原告への取材・報道も数多くされてきた。
(3)「門前払い・裁判即時終結」を求める被告=国に対して弁護団は「訴えの適法性」の論陣を張ってこれを乗り越え、最大の論点である「最低賃金と生活保護の比較計算の5つのごまかし」、国の裁量権逸脱を徹底的かつ多角的に立証してきた。憲法、生存権、経済学、国連社会権規約・ILO条約、運動的視点から有識者4人の意見書を提出し、原告4人の本人尋問を裁判長に決断させて真剣な審理が行われた。被告=国は、最後まで「門前払い」を主張の大半に割き、「国に広大な裁量権がある」、「手続きは踏んでいる」、「国の計算式では生活保護と最賃の逆転は解消されている」と繰り返すばかりで、原告の主張にかみ合った反論は全くなされなかった。
今回の判決は、国の主張を認めるばかりか、賃金が低ければ生活保護などの施策を使え足りる、原告に重大な損害が生じていないと切って捨てる極めて不当なものである。最低賃金が生活保護を下回るという原告の主張には全く触れないものであった。
(4)神奈川の最低賃金は提訴した2011年から87円引きあがり905円となった。罰則付きで強制適用される最賃法の意義と機能、賃金引き上げの直接的影響を受ける労働者は年々拡大し、昨年10月の18円引上げで過去最高の19.2%=約76万人の賃上げに貢献した。これは非正規が全労働者の4割を超え、最低賃金ぎりぎりで働く労働者が激増している事実を示すものだ。「最低賃金1000円以上!」というささやかな原告の訴えは、日本全国の低賃金労働者の最低限、待ったなしの要求である。憲法25条生存権と同27条働く権利、13条幸福追求権を蹂躙し、格差と貧困を拡大させ続ける国の責任を放棄することは絶対に許されない。最賃時間額1500円めざし、直ちに1000円実現、憲法違反の是正を求めて国の責任を厳しく問い続ける。そして、世界の常識である生計費原則の最賃額確保、新たな全国一律最低賃金法の立法化の運動を、すべての労働者・国民との連帯と共同を広げて闘い続けることを宣言し、声明とする。