2015年9月に、当時の安倍政権によって強行された「安保法制=戦争法」は、憲法に違反しているとして、神奈川県内の住民が訴えているのが、「安保法制違憲訴訟」です。
一審の横浜地裁では、22年3月に不当判決が出され、東京高裁に控訴してたたかいを継続してきました。
10秒足らず
判決日の6月14日、法廷の傍聴席は原告・サポーター・支援者らで埋め尽くされましたが、結果は「控訴棄却」という不当判決でした。読み上げるのに要した時間は10秒足らずで、傍聴席から思わず批判の声があがりました。
今回の控訴審では、結審してから担当していた3人の裁判官のうち2人が依願退職するという異例の経過を辿りました。そのうちの1人である脇博人裁判長は、定年まであと1か月という時点での依願退職でした。
安保法制違憲訴訟は全国25地域でとりくまれていますが、山梨訴訟の高裁では、安保法制に批判的な憲法学者である長谷部恭男氏を証人として採用した東京高裁裁判官が、突然異動になるなど不自然と思われる事態がこれまでにもありました。
「クーデター」
控訴人らの主張は主に2つありました。一つは、長谷部恭男氏が説いている予防原則です。集団的自衛権が発動された際、すなわち戦争が始まってしまうと、とり返しのつかない災厄が起こりうることから、裁判所が事前に関与して判断すべきとするものです。
もう一つは、控訴審で憲法学者の石川健治氏が証言した「安保法制は憲法改正の手続きを定めた憲法96条にも違反する『クーデター』ともいえるもの」とする主張です。高裁は証人を採用し、証人尋問では、裁判官から石川教授への質問も行われました。
しかし、今回の高裁判決では、控訴人らの主張について正面から判断することを避け、国の主張に沿うものでした。司法として担うべき責任のみならず権威をもみずから捨てたかのような判決と評するほかありません。
6月20日に、控訴人・サポーター・弁護士60人以上が集って上告検討会が開催され、最高裁に上告する方針が確認されました。