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2024年6月3日

【米レイバーノーツ大会参加レポート】労働組合への期待を組織拡大に結びつけるために

 労働運動が高揚し、次々と労働組合も結成され、ストも闘っているアメリカ。原動力となっているレイバーノーツ(以下LNと表記)の大会に全労連から39人、神奈川労連から薮事務局次長が参加しました。

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1年前にUAW(全米自動車労組)の15万人の組合員がBIG3と呼ばれる大企業を相手にストライキに立ち上がり、「4年で25%」の賃上げを勝ちとった。この4月、LN大会の期間中にはUAWがフォルクスワーゲンで新たに労組を結成したとの報告に会場が沸いた。その他Amazonやスターバックスなど、アメリカで次々と労組が結成されている。
 近年のアメリカ労働運動は、突如生まれたものではなく、長年にわたって準備されてきた運動の成果であった。その準備の軸となってきたのが、「労働運動に運動を取り戻す」をスローガンに活動してきたLNであった。

LN大会とは

 LNは1979年に小さな出版事業から始まった。月刊誌、書籍の出版、会議開催や活動家のネットワークの構築を通じて、「現場中心主義~組合員の声が運動をつくる。組合員が積極的にかかわり、透明性と参加型民主主義が重んじられ、集団的な直接行動が重視され、役員が組合員に近く、組合員への説明責任が果たされている」の原則で、労働運動を支援してきた団体である。
 80年代以降、新自由主義政策で労組への攻撃が激化し、多くの労組幹部は闘うのではなく、労使紛争を避け、譲歩を重ね、嵐をやり過ごそうとした。組合員の参加で協約交渉を闘い、ストも辞さないというスタイルから、議員や候補者支援、法案や条例案を作成するなどの活動に重点が変わり、結果、組合員が直接参加して運動をつくっていくスタイルは弱体化する。
 組合員は組合費を払い、職場で問題が起これば専門のスタッフを頼って組合に駆け込むという労働組合の「消費者」となった。幹部と専従者は組合員を「無関心で活動に参加しない」と批判し、逆に組合員は幹部と距離を感じ「官僚的で必要な時に適切な対応ができていない」と批判し、負の関係が生まれていった。組合員は減少し、新しい実践も減少していくことになる。
 このようなアメリカ労働運動の弱点を理解し、克服しようとするのが、LNのとりくみである。2年に一度開催されるLN大会は、今年4700人が参加。進歩的な運動の教訓を共有し、学びあい、称えあう熱気に包まれた3日間の「スクール」となった。

酷似する労働運動

 アメリカの労働運動の「変遷」は、日本の労働運動に酷似していると感じた。「たたかう労働組合」を掲げていたとしても、現実には役員や専従者がトップダウンで運動を推進している状況であれば、それは「労働運動をつくっている」とは言えない。
 「組合員が集まって議論し、意見が異なるなかで、問題を見つけ、解決策を特定し、ともに行動の計画をたてるというプロセスに基づいてこそ『労働運動をつくっている』と言える。労働者は運動のために必要な人員ではなく、運動構築の主体であり、変革の主体である」という明確な認識にハッとさせられた。

再構築するために

 LN大会の300を超えるワークショップは、それ自体が「労働運動をつくる」トレーニングになっているという感覚を持った。
 労働者が集まり、ともに学びあう場。「私たちは何をしてきたのか?」「私たちがしてきたことから、何を学べるのか?」という問いで大会全体が構成されていた。
 私たちが日々直面している数々の目の前の課題に対処することは大切な活動である。一方で、民主主義と基礎的で日常的な運動の構築は手間と時間がかかりすぎる。だから後回しにされがちだ。
 しかし、私たちは新しい運動を生み出そうとしているのだから、それには手間と時間が必要であることを正面から受け止めなければいけないのではないか。一つひとつの活動を再構築していくこと、そのために何かを止めることも含めて、選択し戦略を立てるというプロセスを踏む必要がある。
 同時に、現状を認識し、どうすべきか、何に重点をあてるのかを組合員と共に考え、共有し、計画を立てる手間と時間のかかる運動は、急がば回れ、私たちがめざす変革への最短距離なのだとも感じた。

何から始めれば

 LNが出版し、今のアメリカの労働運動の活動家必携テキスト「職場を変える秘密のレシピ47」(日本労働弁護団が翻訳)を皆で学ぶ(まねる)ことを提案したい。
 読んでみて、「当たり前のことが書いてある」と感じるのであれば、実践にステップアップしよう。「新しい発見」があればそれを仲間に伝え、学ぶ仲間を拡げよう。
 LNで学んで、ふと気がついたことがある。それは「日本でも同様の実践をしている」という事実だ。建設労連の仲間は「労働者一人ひとりとの対話で仲間を増やす」実践をかつてから続けている。
 学びながら、自らの実践と結びつけ、その上にオリジナリティーを加えていくことができれば、日本の労働運動は大きく発展すると思う。

主体的力を育てよう

様々な調査によって、労働組合への期待の声は3~5割超にのぼっている。今の組織の2倍以上の組織拡大ができる客観的な条件は既にある。
 しかし労働組合は減り続けている。なぜかと考えた時、それは客観的条件を活かすことのできる主体的な力が足りていないからだと思いいたる。
 主体的な力を育て、客観的な条件を活かしきる「労働運動」を改めて構築していくために、アメリカの労働運動からも大いに学んでいきたい。

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