神奈川労連は毎年、かながわ産業労働調査センターの協力により、大企業の利益のため込み(内部留保)について明らかにし、賃上げや適正単価の実現が十分に可能であることを示す「ビクトリーマップ」を作成しています。今年の特徴を紹介します。
80社が内部留保を増やす
今年の神奈川のビクトリーマップで対象としたのは、県内に500人以上の労働者のいる企業で、財務諸表の入手可能な100社で、昨年と同数です。
100社の内部留保は118兆2438億円で、1年間に5兆7787億円(5・1%)も増やしています。
従業員1人あたりでは107万円(4・6%)増やし2430万円、年間平均の非正規雇用労働者を含めても、1人あたり48万円(2・5%)増で1997万円になっています。
個別企業で1年間に1千億円以上増やしたところは、三菱銀行8279億円、ソニー8050億円、日産自動車4986億円、日立製作所4301億円、ENEOSホールディングス4142億円など16社もありました。逆に1千億円以上減らしたのは、日本郵政、第一三共、東芝、東日本旅客鉄道の4社でした。
全体で80社が内部留保を増やし、19社が減らし、1社は増減なしでした。
1人あたりの額で番付した県内企業の状況は、表のとおりです。筆頭のコンコルディア(横浜銀行)は、1人あたり1億7千万円超ものため込みがあり、上位3社は1億円を超えています。
このため込みは、労働者にきちんと分配せず、下請単価などを抑え込んでつくられたものです。今こそ還元させる必要があります。
株主に3兆円超
利益の状況では、個別企業で赤字となったのは5社のみ。前年より減益は20社、増減なしが2社、増益が78社で、前年比で大幅に業績が回復しています。日本電信電話1兆7955億円を筆頭に、三菱銀行とソニーは1兆円を超える利益を上げています。
株主配当(親会社単体のみ)は、合計で前年比4741億円増の3兆2541億円が配当されています。日本電信電話4103億円をはじめ、三菱銀行、武田薬品工業、日本郵政、日立製作所、ブリジストン、キヤノンの7社が1千億円以上を配当しています。配当を増やした企業は64社、前年と同じが23社、減らしたのが13社、無配が6社となっています。
親会社分だけでも株主配当を全連結従業員に回せば、1人あたり66・9万円、非正規雇用労働者を加えても55万円を支給できます。
ほんの僅かで
この100社の労働者すべてに1万円賃上げ(ボーナスは夏冬で5か月とする)するためには、たった0・7%の内部留保を取り崩すだけで可能です。3万円でも2・1%にすぎません。非正規雇用労働者を加えて賃上げしても、1万円なら0・85%、3万円なら2・6%です。
仮に100社の県内労働者に1万円賃上げした場合の県内経済への波及効果・生産誘発額は、総額817億円となります。県内全労働者に1万円賃上げしたとすると、生産誘発額は総額約7千億円となります。3万円ならばそれぞれ3倍の額になります。