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2022年11月10日

「長年の運動で着実に要求前進」全自治体との要請・懇談

 神奈川労連は、自治体における労働者にかかわる施策の拡充や、自治体で働く労働者、とりわけ非正規雇用労働者の賃金・労働条件の改善などを求めて、2005年から県内すべての自治体からアンケートと文書回答を得たうえで、要請・懇談を行っています。今年も10月中旬を中心に実施し、いくつかの課題で貴重な前進を実現しています。

公募は実施しない

 「国の言うとおりにしていたら地方自治行政はなくなってしまう」。懇談で出された自治体職員の声です。

 今年は、会計年度任用職員の「3年目公募」や賃金改善、高卒初任給の最低賃金割れ、公契約の適正実施について懇談しました。

 会計年度任用職員の雇用期間について、国・総務省は、1年更新で3年目には「公募」することを求めていますが、自治体によっては「そもそも応募が少ないので公募などできない」、「雇用不安を煽るので実施したくない」と回答。雇用継続で専門性を高めるため「公募は実施しない」と回答する自治体もありました。

 一方で、「3年公募」を実施することによって、「来年度の雇用はどうなるのか」、「公募で競争にかけられるのか」といった非正規職員から不安の声が職場の混乱を招いているという自治体もありました。

 非正規職員への不合理な処遇格差にも困惑しています。人事院勧告は月例給と一時金を改善しました。正規職員は今年4月に遡及して賃金改善されますが、非正規職員は「同じ任用職員」なのに遡及しません。さらに、昨年の勧告で一時金は削減されましたが、今年の改善は対象外。「減らす時は同様に扱われ、増やす時は対象外」なのです。この点でも、独自に「遡及支給する」と回答する自治体もありました。

最賃以下で働く公務員

 最低賃金の改定によって、正規職員の高卒初任給が最低賃金を下回る自治体が12自治体から15自治体に増えました。

 最賃を下回ることに「申し訳ないと感じている」、「財政状況や国からの交付金削減で改善できない」との表明もありました。国基準を上回る初任給や自治体独自の手当の上乗せは、国からの「ペナルティを覚悟」しなければなりません。ある自治体は「初任給改善や独自手当の支出額相当の国・交付金が削減され、結局、改善額の倍額の財源確保が必要となる」としながら、それでも人材確保や処遇改善のために実施していますが、「応募がなく、採用できない。人材不足は危機的状況」と語る自治体も増えています。

残りは1自治体

 成果も出ています。民間職場では違法となる残業代の計算方法について、16年調査では13自治体が「違法状態」でしたが、今年の懇談で改善が示され残すは1自治体です。

 いわゆる「参考見積」、民間事業者に無償で仕様書や図面を提出させる「公務の悪しき慣行」も問題指摘し懇談も深めてきました。「来年度から予算措置を予定している」、「有償措置にむけて請求事案として予算確保する」と大きな前進がありました。「参考見積の有償化」の実施は全国でも珍しいケースとなります。

 公契約の適正化では、「労務単価の適正な支払いを求めるポスター掲示やチラシ配付を実施する」、「委託事業や指定管理施設での適正な賃金支払いを求めて職員が直接調査する」など、労働者の処遇確保と税の使い方の管理が拡がっています。根気強く、繰り返し要求するとりくみが改善につながっています。

小さな自治体の奮闘

 行動参加者の感想を紹介します。

 2市8町の自治体を抱える西湘労連が、自治体懇談に参加するのは貴重な経験です。財政規模の小さい町が多く、そのなかで町民の安全安心なまちづくりに奔走している行政を見ることができます。

 地方交付税の締め付けを受け、職員も増やせず職員給与も大都市とは雲泥の差で働く職員たち。それでも、改善できる点はないかと工夫しています。賃金格差で職員が集まりにくい、就職しても数年で離職し大都市の自治体職員に転職しているという現実。国準拠の賃金ではもう耐えられないと、自治体独自のとりくみを模索しています。今年の訪問でもある町で「地域手当を0%から3%にすることにした。時間外算定基準も見直す」との話しが聞かれました。

 全体の奉仕者である公務員ではありますが、その労働条件は住民の安全安心に直結するものと思います。

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