安倍政権が狙う医療や介護の改悪。この一環として国保都道府県単位化(以下「単位化」)があります。2017年度実施の単位化とは、国保の保険者を市町村から都道府県に移管すること、国保財政の運営責任を都道府県に変えることを言い、社会保障である国保を医療費抑制と徴収強化の道具に変質させ労働者全体にも大きな影響を与えます。
都道府県は市町村に分賦金と呼ぶ保険料を請求し、市町村は相当する保険料を被保険者から徴収します。分賦金や市町村に配分する調整交付金の算定に、市町村の医療費や保険料収納率を連動させれば、市町村は医療費抑制に動き、否が応でも徴収強化に走ります。まさに国保が社会保障から医療費抑制の道具、徴収強化・収奪の道具に変質します。
「単位化」で国保はどう変わるのか
このような変質以外にも、様々な問題が懸念されます。日本最大の広域国保と言える横浜市国保は、毎年3万件を超える資格証を交付し、強権的徴収も批判されてきましたが、今後もこの問題が拡大していく危険があります。そして市町村の仕事は保険料賦課徴収事務、窓口業務、保険事業、保険事務などに限定され、財政運営の責任は都道府県のため、市町村の責任放棄を招く恐れがあります。
さらに、市町村が赤字補てんや独自減免制度の財源として国保会計に支出する一般会計法定外繰入や繰上充用(翌年度からの借入分)は廃止され、大幅な保険料引き上げが起こります。市町村独自の減免制度も廃止されるため、その分の負担増も起こります。
労働者への影響
労働者の3分の1は非正規労働者であり、その多くは国保加入対象者です。この層に大幅な保険料負担が課されることになります。
正規労働者にも大きな影響を与えます。単位化の財源の一つとして後期高齢者支援金の総報酬制が検討されており、所得が相対的に低い協会けんぽ(主に中小企業労働者等)の負担金は2100億円下がり、健保組合(主に大企業労働者等)と共済(国家公務員・地方公務員・私学など)がその分引き上がります。
しかし、協会けんぽへの国庫負担を廃止して単位化の財源にするため、協会けんぽの保険料は下がりません。あわせて、財政力のある国保組合への補助廃止も打ち出されており、建設国保への影響が懸念されます。
賃金の2割を超える税や保険料の徴収はまさに国家による収奪であり、怒りを持って単位化に反対しましょう。